合理的配慮の提供

合理的配慮の提供とは

  • 「合理的配慮」とは、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに負担が重すぎない範囲(=「過重な負担※1」のない範囲)で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること※2)が求められるものです。「過重な負担」があるときでも、障害のある人に、なぜ「過重な負担」があるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話合い、理解を得るよう努めることが大切です。

    ※1 「過重な負担」の判断は、具体的場面や状況に応じて、以下の要素等を考慮し、総合的・客観的に判断することが必要です。

    • 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
    • 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
    • 費用・負担の程度
    • 事務・事業規模
    • 財政・財務状況

    ※2 令和3年6月公布の改正法により、事業者による合理的配慮の提供が義務化されることとなっています(施行日:公布の日(R3.6.4)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)。改正法の詳細については以下を参照してください。

    〇「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要」 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要(31.4KB)(内閣府のホームページへリンク)

  • 合理的配慮の提供について、障害者からの社会的障壁の除去についての申出の内容と、その申出に対し過重な負担のない範囲でできる対応について、障害者と事業者が対話を重ね、解決策を検討していくことが重要です。このような双方のやりとりを「建設的対話」といいます。 申出について対応が難しい場合でも、障害者と事業者双方が持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代替となる手段を見つけていくことができます。

  • 例えば、従業員が少ないお店で混雑しているときに、「車いすを押して店内を案内してほしい」と伝えられた場合に、話し合った上で、「過重な負担」のない範囲で、別の方法を探すなどが考えられます。その内容は、障害特性やそれぞれの場面・状況に応じて異なります。

【合理的配慮の具体例】

  • 意思を伝え合うために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う。サムネイル画像
    意思を伝え合うために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う。
  • 段差がある場合に、スロープなどを使って補助する。サムネイル画像
    段差がある場合に、スロープなどを使って補助する。
  • 障害者から「自筆が難しいので代筆してほしい」と伝えられたとき、代筆に問題がない書類の場合は、障害者の意思を十分に確認しながら代筆する。サムネイル画像
    障害者から「自筆が難しいので代筆してほしい」と伝えられたとき、
    代筆に問題がない書類の場合は、障害者の意思を十分に確認しながら代筆する。

★合理的配慮の提供における留意点(対話の際に避けるべき言葉)

  • 「先例がありません」
    → 障害者差別解消法が施行されており、先例がないことは断る理由になりません。
  • 「特別扱いできません」
    → 特別扱いではなく、障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的です。
  • 「もし何かあったら」
    → 漠然としたリスクでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。
  • 「その障害種別ならば」
    → 同じ障害種別でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、一括りにしないで検討する必要があります。
    ※全盲(視覚的な情報を全く得られない状態等)/弱視(視覚的な情報をほとんど得られない状態等)、ろう(補聴器等をつけても音声が判別できない状態等)/難聴(残存聴力を活用してある程度聞き取れる状態等)など

「合理的配慮の提供」として障害者から求められた具体的な手段のうち、合理的ではないものや過重な負担があるものについては、その提供をお断りすることができます。

  • 膨大な分量の資料の全文読み上げを求められた
  • 筆談で十分対応できる簡潔なやり取りに手話通訳者の派遣を求められた
  • 必要性がないのに買物中は常に店員が同行することを求められた
  • 個人的な外出予定に沿うよう公共交通機関の時間変更を求められた
  • 否定されるとストレスで症状が悪化してしまうからと過度な要望であっても否定せずに実行することを求められた
    など

【合理的配慮の提供に関するQ&A】

<過重な負担>

障害者から「合理的配慮の提供」として申出のあった具体的な手段が過重な負担であるときは、合理的配慮の提供をする必要はありませんか。
障害者から申出のあった「合理的配慮の提供」の具体的な手段が過重な負担であるときは、求められた手段を行う義務はありません。ただし、その場合であっても、その申出に対し過重な負担のない範囲でできる対応について、障害者と話し合い、解決策を検討していくことが重要です。

<総合的・客観的判断>

障害者が不当な差別的取扱い/合理的配慮の不提供を受けたと感じた場合には、それをもって常に合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
障害者側からの感じ方のみで合理的配慮の不提供に当たると決まるのではなく、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することとなります。

<相談/問合せ>

相談/問合せについて、時間や回数などを制限した場合には、合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
相談/問合せの制限は、一律に合理的配慮の不提供に当たるのではなく、それが当たるのか否かを具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することとなります。
※ 例えば一人が相談し続けていることで他の相談者たちが長時間待っている場合などは、対応に区切りをつけたとしても合理的配慮の不提供には当たりません。

<身体介護>

飲食店での食事介助や温泉施設での入浴介助など、身体介護に当たる行為を求められた場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
身体介護に当たる行為は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。

<送迎>

障害により移動困難な方から、自宅や最寄り駅などへ送迎してほしいと言われた場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
自宅などへの送迎は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。

<インターネット中継>

障害により移動困難な方から、開催されるイベントを自宅のパソコンなどにインターネット中継してほしいと言われた場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
自宅などへのインターネット中継は、それを事務・事業の一環として行っている場合を除き、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。

<担当者変更>

「主治医をA氏にしてほしい」「相談員からB氏を外してほしい」といった担当者変更を求められた場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
担当者変更は、現担当者の業務遂行などに問題がないのであれば、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。問題があるのであれば、そもそも障害の有無に関わらず対処すべきことなので、合理的配慮ではなく通常行うべきこととして変更を検討してください。
※ 異性と話すことができないなどの特殊な理由があるときは、担当者変更が合理的配慮の提供に当たる場合もあります。

<他の障害種別向けの配慮>

聴覚に障害のない障害者が文章でのやり取りを求めたり、体温調節機能に障害のない障害者が室温変更を求めたりなど、他の障害種別向けの対応を求められた場合には、お断りすると合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
他の障害種別向けの配慮は、お断りしても合理的配慮の不提供には当たりません。

<不適切な言動>

暴言や器物破損などの不適切な言動について、障害によるストレスや情緒不安定などが影響している場合には、許容しないと合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
不適切な言動は、障害による影響を考慮することが望ましいですが、過度なものを許容しなくとも、合理的配慮の不提供には当たりません。

<料金設定>

演奏会などの料金設定について、例えばA席5,000円/B席2,500円、車イス使用者がB席を希望、車イスに対応できるのはA席のみであった場合には、A席を2,500円で購入できるようにしないと合理的配慮の不提供となるのでしょうか。
等級が分かれている料金設定は、まず希望等級のものを選択できるように合理的配慮の提供を検討してください。その結果として希望等級のものを選択できないのであれば、別等級への変更を勧めても、合理的配慮の不提供には当たりません。ただし、正当な理由なく障害の有無によって選択肢に差が生じることは望ましくありませんので、いずれの選択肢においても対応できるようにすることが期待されます。
※ 例示の場合には、まずB席を2,500円で購入できるように合理的配慮の提供を検討し、B席では対応できないという結果であれば、A席を5,000円で購入することを勧めても合理的配慮の不提供には当たりません。

【事業分野ごとの考え方等】

なお、各事業分野の考え方等については、主務大臣が定める「対応指針(ガイドライン)」に規定されていますので、そちらも是非御参照ください。

関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(内閣府のホームページへリンク)